1997年9月26日(金)
■サロマ湖〜網走〜札幌
午前7時30分起床。外はどんよりと曇っている。しかも、風が強い。
天気が良ければホテルのレンタサイクルで湧網線廃線敷の探検を、と企んでいたのだが、途中、雨に降られても大変なので、バスの時間までゆっくり朝寝坊をすることにした。湧網線代替バスで昼まえに網走に戻る。
網走では若干時間があったので、オホーツク水族館を見物。
『クリオネ』という不思議な生物がいた。透明な体の中に鮮紅色の消化管が見え、水槽の中を垂直に上下している。流氷と共にオホーツク海に洗われる謎の生物なのだそうだ。何を食べているかも含め、生態は一切不明との説明書きがあるが、なのにどうして人工飼育ができるのか、こちらも謎のままである。
オホーツク水族館 |
オホーツク6号(キハ183-902)・網走駅にて |
特急オホーツク6号は所定185系4連のところ、増結1号車が入って5両編成となっている。先頭はキハ183−902。そのあと、内装に手が入ったキハ182×2、キロハ182、キハ183と続く。
私が乗る2号車は、わずか10名程の乗客で網走を出発した。すぐに車掌の肉声放送が始まる。新鋭特急やワンマン列車はすべてテープによる放送であったから、少しほっとした気分になる。
女満別や美幌での乗車は少なく、北見からネクタイ・スーツ姿のビジネス客が大挙して乗り込んできた。北見駅の旭川方は地下化されていて、しばらく真っ暗な単線トンネルを走る。トンネルを出ると、新しい建て売り住宅が続くが、すぐに列車は畑の中を走るようになる。馬鈴薯、あるいはタマネギだろうか、畑のあちこちに収穫物を入れた金属製のコンテナが置かれている。あのまま北見駅からコンテナに載せられ、本州方面に運びだされるのかも知れない。
キハ183-902の運転席側面 |
北海道独自のホーローびきのサボ |
留辺蕊を過ぎると、列車はサミットに向かって急坂を上る。速度がぐんと落ちるのがわかる。峠を下った生田原駅は、駅前に新しい役場が建っているて、かつての貨物側線は駐車場となっていた。
15時37分、どんづまりの遠軽着。ここが石北本線のほぼ中間点となっている。ホームには弁当の立ち売りがいて、かにめしを売っていた。
北海道では、車内販売の売り上げが激減しているそうである。列車の高速化、つまり乗車時間の短縮に伴って、車内で食事をとる必然性が少なくなってきたからであろう。まして、列車に乗車中途中駅で駅弁を買うような客はほとんどいないのだと思う。事実、オホーツク6号から降りて弁当を買い求めた客は、私ひとりであった。
遠軽駅には全列車が停車してエンド交換を行うから、他の中間駅よりはるかに好条件であるが、果たして駅弁立ち売りはいつまで残るのであろうか。
遠軽駅で、もとの中湧別方を望む。 |
遠軽駅のかにめし |
遠軽で列車の進行方向が変る。D51やラッセル車が展示された小公園を横目に、列車は石北峠に向けて加速する。白滝を過ぎると人家は皆無となる。この区間、定期普通列車は1日1往復のみであるが、これは客を乗せるためではなくて、北見地区で働くキハ48を基地がある旭川まで回送するためのものではないかと思う。
奥白滝を出ると、紅葉が進んだ山肌が線路際まで迫ってくる。分水嶺の長いトンネルを抜けると上越信号場、ついで中越駅、天幕駅を通過。上越は信号場であるから客扱いはしないが、後二者も乗降客は皆無に等しいであろう。
16時54分、上川着。夕やみが迫って、周囲はほとんど何も見えなくなった。17時35分、旭川着。乗降客は思った程多くない。ホームの照明はうすぼんやりとしている。
旭川から函館本線に入り、列車は複線電化のレールを疾走する。深川、滝川と止まっていくが、すぐ前をライラック24号が先行しているから新たに乗車する客はいない。
19時11分、ネオンの瞬く札幌に着く。
改札口を出て地下鉄乗り場に向かう。旧地平ホーム跡を過ぎたところで見覚えのある場所に出た。昔の正面改札口である。JR北海道本社が入居していた旧札幌駅ビルは撤去されたが、旧正面改札口の部分だけがそのまま残されているのであった。
数日間、道東を旅行して札幌に来ると、とんでもない都会に来たような感じがする。行き交うサラリーマンやOLの姿も大阪と変わりがない。
ただ、携帯電話を使っている人が非常に目についた。札幌は日本で最初にPHSの実験サービスを開始した街である。札幌市内だけに限れば、移動電話の普及率は相当高いのではないかと思う。
今夜の宿は薄野のはずれで、これから地下鉄で宿に向かう。
地下鉄さっぽろ駅の改札で切符を裏返しに投入してみたら、けたたましく警報チャイムが鳴った。自動改札機自体はSFカード対応の新型に交換されているのだが、裏返し投入不可の伝統は受け継がれているらしい。
すすきの駅から激しい雨の中を歩いて、20時前に目指すビジネスホテルに着いた。