アマチュア無線の世界で、今回、電波の形式を新方式で表示することになった。
新方式と言っても、プロの世界では今からふた昔も前(1983年)から使われている表示方式であり、単にアマチュア無線の世界が時代に取り残されていただけなのだが、アマチュアにとってはあまり馴染みがない新しい電波型式の表示方法について考えてみたい。
さて、お手元にある無線局免許状をご覧になればわかる通り、旧表示では、電波の型式は"主搬送波の変調の形式(アルファベット1文字)+伝送の型式(数字1文字)+補足的特性(アルファベット1文字)"の3文字で表現される。補足的特性はない場合もある。 FMがF3、CWはA1、SSBはA3Jとなるのは、皆さんご存知の通りだ。
新表示では、基本的には"主搬送波の変調の形式(アルファベット1文字)+主搬送波を変調する信号の性質(数字1文字)+伝送情報の形式(アルファベット1文字)"の合計3文字から構成される。FMがF3E、CWはA1A、SSBはJ3Eとなる。
これだけを見れば、あまり違いがないと思うかも知れない。けれども、たとえば2文字目の数字は、旧表示と新表示でまるっきり意味が異なることに留意しないといけない。
2文字目の数字の数字の意味は、旧表示では、1は"変調用可聴周波数を使用しない電信"、3は"電話"、4は"ファクシミリ"、5は"テレビジョン"となっていた。ところが、新表示では、信号がディジタルかアナログか、あるいは、単一チャネルかのか複数チャネルなのかに注目して分類しており、"電信"、"電話"、"ファクシミリ"、"テレビジョン"といった情報の種類は、3文字目で表現されることになった。
だから、従来、F4と表現されていたファクシミリは、F3Cとなる。F5であったSSTVはF3Fだ。旧来の感覚で"F3C"なぞと言うと、何やら新手の無線電話のような印象を受けるが、最終的に人間が受け取る情報の型式は末尾1文字で表現されるから、これはファクシミリであることがわかる。
ところで、数年前から、いわゆるディジタル方式の無線電話機がアマチュア用として販売されている。音声を符号化したあと、そのディジタル信号を周波数変調で送信するものだが、旧表示では、ディジタルorアナログという概念がなかったから、電波型式としてはF3となっていた。しかし、新表示では、F1Eとなって、アナログ方式のF3Eとは明確に区分されることになる。
この例を見てもわかるとおり、旧表示による表現と新表示のそれは、必ずしも一対一で対応している訳ではない。つまり、コンピュータを使って、現在免許されている72万局余(2003年3月末現在)のアマチュア局の免許状を機械的に書き換えることはできないのである。
実は、今から20年前、業務局の電波型式の表現が新表示に移行した際にアマチュア局だけが取り残されたのは、この事務の煩雑さが理由であったと言われる。面倒な仕事は先送りするといういかにもお役所的対応だった訳だが、さすがに20年以上も放置するのはマズイと考えたのかも知れない。
しかし、総務省のお役人はどこまでも優秀である。新表示への移行にあたっては、"一括記載"なる新方式を編み出したのである。つまり、免許された電波型式を免許状に列記するのをやめて、複数の電波型式を一括記載コードに置き換えることにしたのだ。
この"一括記載"という方式は、免許の内容が定型的な業務無線(MCAや国際VHF、短波帯の航空無線など)で既に採用されている方式ではある。その目的は、"申請や記載上の簡素化"であるとされているが、実際のところは、新表示への移行に伴う煩雑な事務を回避する目的があることは疑いがない。(当局が発行する免許状は、一括記載コードが使われるのに対して、免許人が提出する工事設計書には、個々の電波型式を列記することになっている。)
ともあれ、2004年1月13日以降に発給されるアマチュア局の免許状は、一括記載コードを使ったものになるはずで、現在のような電波型式を延々列記した免許状は、過去のものになる。
私のアマチュア局の免許状
電波の型式の表示(電波法施行規則第4条2から) |
||
主搬送波の変調の型式
主搬送波を変調する信号の性質
伝送情報の型式
|
||
Copyright by Heian Software Engineering (C)H.S.E. 2003 Allrights reserved.
2003年9月7日 制作 2003年9月7日 修正