我が家からクルマで10分ほどのところに、JR東海・大阪車両所---通称鳥飼基地がある。
東西約2Km、南北約230m、面積37万m2(甲子園球場の9倍)という想像を絶する規模で、大柄な新幹線電車を約680両収容できる。東海道新幹線下り方の基地として、東京から西下してきた列車の整備・点検を行うほか、JR西日本所属の車両も休息に訪れるので、東海道山陽新幹線を走るほぼすべての車両が見られる貴重なスポットでもある。大阪一の幹線道路である中央環状線に面しており、一般の人の目に留まることも多いせいか、休日ともなると、鉄道ファンのみならず、幼い子供を連れた若夫婦などが多数集まるようだ。
構内をゆっくり進む入換車両、本線を軽やかに駆け抜ける営業列車、更には空中をのっそり散歩する大阪モノレールと、その見どころは数多いが、"無線系鉄ちゃん"ならば、150.97MHzをワッチすると、その楽しみは倍加すること間違いなしであろう。
西門 |
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中央環状線に面した西門(→地図)
。 裏口的な位置づけのゲートだが、電留線に居並ぶ新幹線車両を見るには、ここがいちばん。 JR千里丘駅から、阪急バス柱本営業所前または摂津ふれあいの里行きに乗車、鶴野橋バス停で下車すると目の前である。 (2004年5月4日撮影) |
休日ともなると、幼い子供を連れた若夫婦が多く集まる。
JR東海の新幹線車両は300系か700系の2種類に統一されてしまい、少々面白さに欠ける面がある。まれに、"ドクターイエロー"が休んでいることもある。 (2004年5月4日撮影) |
幼児の、乗り物に対する興味は、男の子のほうが断然強い。
子供連れの大半はマイカーでやってくる。短時間なら中央環状線上の路駐も可能だが、しばしば駐禁取り締まりの警官が現れるので注意したほうがよい。 (2004年5月4日撮影) |
近畿道・中央環状線と東海道新幹線の立体交差部分。
1973年2月21日の夕刻、鳥飼基地から新大阪駅に向かった回送715A電車が所定位置で停止せず、本線との合流部分まで冒進・脱線した。本線上を京都方から接近しつつあったこだま143号は直前で停止し、危うく衝突を免れた。死傷者こそなかったものの、絶対安全と言われたATC神話が崩れた瞬間であった。 新幹線史上に名を残す"鳥飼事故"。ここがその現場である。 (2004年5月4日撮影) |
仕業庫付近 |
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西門から跨道橋をくぐってすぐを左折し、本線に沿った道をどんどん東に進むと、防音壁が途切れる場所がある。ここからも基地内の様子を眺めることができる(→地図)。
ちょうど仕業庫の入り口にあたる場所で、ゆっくりと入出庫する車両を観察できる。 写真は、700系が入庫するところ。全長400mの編成全体が庫(くら)に入りきるまで、相当の時間がかかる。 (2004年5月4日撮影) |
仕業庫を出て通路線に向かう300系。運が良ければ、車体洗滌機でシャワーを浴びる様子が見られるかも知れない。
手前のぶっといレールは、本線。 (2004年5月4日撮影) |
少し離れた場所から見たところ。
H鋼で造られた強固なフェンスが二重に設けられている。手前の道路(橋)を誤って直進した自動車が本線線路内に突っ込む事故への対策である。 (2004年5月4日撮影) |
東門 |
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こちらは、正門にあたる東門(→地図)。
府道仁和寺線に面しており、東電留線の一部が見える。 (2004年5月4日撮影) |
広大な基地内を移動する職員のために、シャトルバスが巡回している。
(2004年5月4日撮影) |
新幹線公園 |
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"鳥飼基地"の北隣はJR貨物の大阪貨物ターミナル駅だが、更に北側にはその名も"新幹線公園"という小公園があり、新幹線車両(21-73)と電気機関車(EF15 120)が保存されている(→地図)。
(2003年5月4日撮影) |
謎の構造物 |
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鳥飼基地東京方の本線上にある謎の構造物(→地図)。最新鋭の700系が駆け抜ける。
東海道新幹線の計画段階では、貨物列車を運転するプランがあった。 この構造物は、下り貨物列車が上り本線を乗り越えて大阪貨物ターミナル駅に入るための立体交差部分である。 (2003年5月4日撮影) |
構内無線 |
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新幹線の入換作業は、構内無線による打ち合わせとATCのバックアップを受けた入換信号機の現示によって行われる。在来線のような構内掛による誘導は原則としてない。そこで、150MHz帯プレストーク(単信)方式の構内無線をワッチすると、基地内の車両の往来が面白いように分かる。
電波法の主旨にのっとり、その内容の詳細を紹介することは避けるが、『"相手局呼出名称" こちらは "自局呼出名称" どうぞ』で始まり、『さようなら』で終わる規則どおりの交信手順は、すがすがしささえ感じるほどである。
信号扱所(基地局)の呼出名称は"かんせんとうかいとりがい"、車両(移動局)のそれは"かんせんとうかいれっしゃ+数字"(JR東海所属車両)または"かんせんにしれっしゃ+数字"(JR西日本所属車両)だが、数字部分は一定のルールに従って命名されている。
千位と百位で、編成記号と博多方/東京方の区別がわかり、十位と一位は編成番号に一致する。つまり、この数字を聞くだけで、編成と運転台が判明するのである。
所属 | 編成名 | 系列 | 呼出名称の数字部分 | 備 考 | |
博多方 | 東京方 | ||||
東海 | J | 300系 | 85XX | 86XX | |
C | 700系 | 45XX | 46XX | ||
西日本 | B | 700系 | 3XX | 4XX | |
E | 700系 | 95XX | 96XX | "ひかりRailstar"用8両編成 | |
W | 500系 | 15XX | 16XX | "500系のぞみ" | |
F | 300系 | 35XX | 36XX | ||
R | 0系 | 5XX | 6XX | "こだま"用6両編成 |
例JR東海C3編成(700系) 1号車(博多方)運転台:かんせんとうかいれっしゃ4503 JR西日本W2編成(500系) 16号車(東京方運転台):かんせんにしれっしゃ1602 ※JR東海所属の"ドクターイエロー"こと923形新幹線電気軌道総合試験車(T4編成)は、 博多方運転台(923-1):かんせんとうかいれっしゃ923の11
東京方運転台(923-7):かんせんとうかいれっしゃ923の16
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JR西日本・ひかりRailstar用700系車両(E14編成)東京方運転台。
○部分に構内無線の呼出名称プレートが張られている。無線機の操作部は、その左下。(広島新幹線まつり2004で撮影)
鳥飼基地の周辺は、倉庫や運送会社などが立ち並んでおり、構内を一望できる場所はない。
たとえば、基地の西端を走る大阪モノレールに乗車すると、
のような写真が撮れる(1998年4月)のだけれど、ほんの一瞬の風景なので、構内配線を観察する余裕はなかろう。
そこで、書物に掲載されていた構内配線図をお目にかける。
鉄道ジャーナル第36巻1号(2002年1月号) p43 "新幹線大阪車両所を見る"から引用
無線交信では、仕業庫内の#0〜6と交検庫内の#7・8は、"くらXX番"と呼ぶようである。
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2004年5月4日 制作 2008年5月5日 修正