FT-729簡易マニュアル

 FT-729は、1992年に八重洲無線(現バーテックススタンダード)から発売された145MHz/430MHz帯FMハンディトランシーバである。
 日本のアマチュア無線局数がその頂点にさしかかる頃(ピークは136万4千局<95年3月末>、現在は89万8千局<00年3月末>)に発売された無線機だけあって、各種機能が満載されており、発売開始後10年を経た現在でも、その機能は決して色あせていない。

キー操作

 FT-729の操作体系は、YAESU標準とも言えるもので、同社の無線機を使ったことがある人なら、違和感を抱くことはないと思う。しかし、セットモードともなると、すぐには理解不能の操作もあるので、キー操作の要点を記してみた。ピンク色のアミかけをした部分は、セットモード時([F]→[0])時の動作である。

 
Key 単独 [F]に続いて 単独 [F]に続いて
1
(SAVE)
数字"1" トーンスケルチ運用切換 ページャ運用時の送信ディレイ設定 送信ホールド機能ON/OFF
2
(T SET)
数字"2" トーン周波数設定
Beep音ON/OFF
呼出音回数設定 ***
3
(LOW)
数字"3" 送信出力切替 APOの機能設定 APO予告メロディ設定
4
(SAVE)
数字"4" バッテリセーブON/OFF
バッテリセーブ時間設定
TX SAVE機能のON/OFF DTMFモニタ音設定
5
(LOCK)
数字"5" キーロック/DIALロック切替 ダイヤルロック機能のON/OFF Beep音の設定(DTMF/ドレミ)
6
(RPT)
数字"6" 送信オフセット切替 シフト幅設定
ARS機能のON/OFF
***
7
(STEP)
数字"7" ステップ設定
スキャンストップモード設定
BUSY LED ON/OFF 1KHz桁入力ON/OFF
8
(VOX)
数字"8" VOX運用切替 VOXディレイタイム設定 DTMFコードのROW出力ON/OFF
9
(XFER)
数字"9" メインバンド/サブバンドのデータ入替 ページャ自動応答ON/OFF DTMFコードのCOLM出力ON/OFF
0
(SET)
数字"0" セットモードに移行 セットモード解除 ***
MR
(SKIP)
<VFO>メモリモードへ移行
<MEMORY>メモリチューン
<VFO>ダイレクトPMS操作
<MEMORY>メモリチャネルスキップセット/リセット
キーボード動作の入替 ***
VFO
(PRI)
<VFO>VFO A/B切り替え
<MEMORY>VFOモードに移行
プライオリティON/OFF
※メモリチューン時は、メモリデータをVFOに移行
受信音切替 ***
CALL
(DTMF)
CallCH呼出/解除 DTMFモードに移行 呼出音確認 呼出音変更
BAND
(ALT)
メインバンド/サブバンド切替 オルタネート機能のON/OFF IBS機能のON/OFF サブバンド表示切替
SUB
(SUB OP)
サブバンドON/OFF サブバンドオペレーション *** ***

(MHz)
<VFO>1ステップUP
<MEMORY>1チャネルUP
<VFO>1MHzUP
<MEMORY>1チャネルUP
[F]+▼もしくは[F]+▼時、ステップ幅10MHz ***

(MHz)
<VFO>1ステップDOWN
<MEMORY>1チャネルDOWN
<VFO>1MHzDOWN
<MEMORY>1チャネルDOWN
[F]+▼もしくは[F]+▼時、ステップ幅1MHz ***
[F]M ファンクション動作
長押しでメモリセット
ファンクション解除 ファンクション動作 ファンクション解除
REV
(CLOCK)
送受信周波数リバース 時刻表示
時刻表示中に再度押下で時刻設定
レピータ運用時のスケルチOFF動作の設定 ワンタッチページャ機能のON/OFF
PAGE
(CODE)
ページャ機能・ベル運用操作 ページャコードの設定 ワンタッチページャ機能のON/OFF 呼出音動作変更

受信範囲拡大

 内部のチップ抵抗を除去したあと、[▲]と[▼]を同時に押しながら電源ON。改造後の受信範囲(LCD表示)は、110〜180MHz、300〜500MHz、800〜950MHzである。なお、『[▲]と[▼]を同時に押しながら電源ON』はオールリセット動作であり、メモリ内容等はすべて消去される。

AM受信

 [F]→[0]→[F]→[VFO]を順次押下することによって、AM/FMの切替ができる。

SG(信号発生器)として利用する

 FT-729の受信部は、ダブルスーパーヘテロダイン(アッパーヘテロダイン)であり、第一中間周波数は15.25MHz(144MHz帯)、44.775MHz(430MHz帯)である。従って、FT-729で信号を受信しているときは、受信周波数から15.25MHz(144MHz帯)もしくは44.775MHz(430MHz帯)下で局部発信器からの漏れ電波が発射されていることになる。
 FT-729の局発の漏洩電波は案外強力(=受信機としては上等とは言えない)なので、簡易SGとして利用可能である。144MHz帯の場合、シフト周波数幅を15.25MHz(+シフト)にセットしておくと、ダイヤルを希望周波数にあわせたのち、[REV]を押すだけで微弱電波が発射されることになる(430MHz帯の場合は、中間周波数が半端なのでNG )。単に局発の漏れ電波を利用しているだけなので変調はかからないが、業務用無線機の受信部か生きているか否かのチェック等に利用できる。(バッテリーセーブが働いているときは、局部発信器が間欠的に動作している様子もよくわかるであろう。)

パネル照明常時点灯

 [F]→[LAMP]で、パネル照明が常時点灯したままになる。

メモリ

 FT-729は、バンド毎に合計41chの周波数メモリを持っている。
 うち、"U"と"L"は、バンドスキャン動作に使用する特殊メモリであり、"C"は[CALL]キーで一発呼出が可能なメモリである通常、呼出周波数をセットする。

 各メモリには、周波数のほか、送信シフト幅(or 送信周波数)、ステップ、トーンスケルチの動作(周波数を含む)等もメモリできる。
 更にメモリ運用時に[MR]キーを押すことによって、メモリ周波数を一時的に変更できる(メモリーチューン)。また、メモリーチューン時、[F]→[VFO]を押下することによって、メモリ内容をVFOにコピーできる。

 複信方式の業務無線の中には、送受信間隔が一定のものが少なくない。代表的なチャネルについて、送信シフト幅も含めてメモリしておくと便利である。

 受信周波数と異なる送信周波数をメモリする場合、まず、受信周波数を書き込んだあと、送信周波数をセットし、[F]を長押し。書き込みたいメモリ番号が点滅表示になったら、PTTを押しながら再度[F]を押下する。

トーンスキャン

 トーンスケルチ運用中に、[F]→[2]→[▲](または[▼])とすることにより、トーンスキャンを開始する。受信波にトーンスケルチ用の低周波信号が重畳されていた場合、その周波数でスキャンが停止する。

クロスバンドレピータ化

 [6]を押しながら電源を入れると、クロスバンドレピータとなる。クロスバンドレピータとは、144MHz帯で受信した信号を430MHz帯で送信すると同時に、その逆を行う機能である。これを用いることによって、バンドの異なる2台の無線機の間で通話が可能になる。

 クロスバンドレピータ化と同時にトーンスケルチがONになり、また、出力がLowになる。前者は無用な中継を防ぐため、後者は連続送信の負荷から終段モジュールを保護するための措置であろう。

 144MHz帯(144〜146MHz)と430MHz帯(430〜440MHz)は、完全な高調波関係にある。ハンディトランシーバに内蔵できる程度のデュプレクサでは、144MHz帯での送信時、その3倍高調波が430MHz帯の受信回路に侵入するので、感度が抑圧される現象が起きる。

 まあ、オマケ程度の機能と考えたほうがいいであろう。

申請書の記載方法

 いわゆる技適照明機種ではないので、アマチュア局の免許を受ける際にはTSSの保証認定が必要である。しかし、旧JARDの登録機種なので、登録番号を記載すれば送信機系統図を添付する必要はない。

発射可能な電波の形式・周波数の範囲 F3 144MHz帯
F3 430MHz帯
変調の方式 リアクタンス変調
定格出力 5W
終段管名称 144MHz帯 M67748L × 1
430MHz帯 S-AU26 × 1
終段管電圧 13.8V
旧JARD登録番号 B146S

バックアップ電池

 最近の無線機はEEPROMを使用しているので、電源が断たれても記憶内容は保持される。しかし、FT-729は旧式のCMOSメモリを使っているので、バックアップ電源が必要である。
 FT-729のバックアップ電源は、リチウムコイン電池(CR1220)1コである。この電池が消耗すると、メモリ内容が破壊されることがあるので、早めの交換を心がけたい。

 以前、リチウムコイン電池が半ば消耗している時にバッテリパックを取り換えたら、300MHz帯を含むアマチュアバンド外での送信が可能になって驚いたことがある。CMOSメモリに記憶されているオフバンド送信禁止のフラグが変化したためらしい。
 FT-729は、いわゆるJマーク付きの無線機であり、いかなる改造を施してもアマチュアバンド外では電波の発射ができないことになっている。しかし、この経験から察するに、ファームウエアでアマチュアバンド外送信を完全に禁止しているわけではなく、単にRAM上のオフバンド送信禁止フラグの書き換えを禁じているに過ぎないようだ。

注意

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2002年5月5日 制作 2005年10月16日 修正