HITACHI FLORA330

液漏れアルミ電解コンデンサの交換

 自宅にあるWindowsパソコンが突然フリーズするようになりました。
 いろいろ原因を探った結果、どうやら数年前に市場に出回った台湾製のアルミ電解コンデンサの不良らしいことがわかりました。
 独力でこの不良コンデンサを交換することに成功したので、その経緯をレポートします。

私のFLORA330DK3について


fig0 : HITACHI FLORA330DK3

 私がふだんサブパソコンとして使っているWindowsマシン---HITACHI FLORA330DK3(型名:PC7DK3-QK08H2C00)。Windows2000Professionalをインストールしている。

 Pentium3 933MHz, 128MB, 20GBというスペックは、現在では相当に見劣りする。しかし、一般的なWebサイト閲覧、文書作成、表計算などには十分すぎる性能である。(参考:日立製作所)

 一昨年、オークションで格安購入し、いままで何不自由なく使ってきたが、数か月くらい前から、使用中に突然フリーズする現象がみられるようになった。

フリーズの原因をさぐる

 私は漢字Talk以来のMacユーザーであるから、散発的に起きるフリーズは気にならない。

 『まあ、こんなものか...』と思ってそのまま使い続けてきたのだが、ここ1週間くらいのうちに、起動して10分とたたないうちにフリーズするようになった。これはいくら何でもおかしい。

 『はは〜、Windowsの世界で猛威を振るっているコンピューターウイルスに感染したのかな』と考え、OSをCD ROMからインストールし直したのだが、結果は同じであった。パソコンを起動したあと、アプリケーションソフトを何ひとつ使わなくてもフリーズが起きる。

 ソフトウエアを"新品"にしてもなお同じ現象が起きるということは、ハードウエアの障害と考えざるを得ない。

 この場合、メーカーに修理に出すというのが一般的な対処法であろう。けれども、タダ同然で入手した中古パソコンだから、保証書はない。仮にあっても、保証期間はとっくに切れているだろうから、その技術料だけで入手価格を軽く超えることは確実である。

 思い切って廃棄処分にするという手もある。けれども、今どき、パソコンをゴミとして捨てるのにもお金がかかる。私は途方に暮れてしまった。

 ところが、である。
 FLORA330の情報を探してネット上を彷徨っていたところ、とあるジャンクパソコン通販サイトで、こんな記述があった。

HITACHI FLORA 330 DK1

PentiumIII 866MHz, 128MB/20GB/CD/FD/Ether
PCI×2(空き×2)メモリ×2(空き×1)SDRAM
電解コンデンサ液漏れ有り

こちらも省スペース!
同じくPenIII866とと結構ハイスペック!
でもコンデンサに液漏れが有ります。
スペックがでているので今のところは通常使用可能です。治せる方は挑戦してみて!

 1台だけなら偶発的な故障を起こしたジャンク品と考えられるが、大量に売られているところを見ると、FLORA330DK1そのものに何らかの欠陥があった疑いがある。FLORA330DK1は、DK3とほぼ同時期に販売されていたパソコンだから、DK3に同様の欠陥があっても不思議ではない。

 そこで、Key wordに"コンデンサ"・"液漏れ"を加えて検索したところ、こんなサイトがHitした。

 詳細は上記リンクをお読みいただきたいが、要約すれば、2001年後半から2002年前半頃に台湾で製造されたアルミ電解コンデンサに大量の不良品が含まれており、これらのコンデンサを使用したパソコンは、5000時間程度使用したところで、コンデンサが液漏れを起こすというのである。

 パソコンに使用されるコンデンサの大半は、電源回路の平滑用である。コンデンサが故障すると、電源のリプルが増加し、チップが誤動作を起こす可能性がある。FLORA330DK3は2001年7月に発売されたモデルらしいから、この台湾製不良コンデンサが使われている可能性は大いにある。

 そこで、私のFLORA330DK3の筐体を見たら、こんなステッカーが貼られているではないか。


fig1 : パソコンのステッカー

 同じ機体に"MADE IN JAPAN"と"MADE IN TAIWAN R.O.C."の2つの表示があるのもおかしな話だが、それはさておき、私のFLORA330DK3は、2001年6月18日、台湾で製造されたことがわかった。

 ちょうど不良電解コンデンサが出回り始めた時期である。

分解


fig2 : カバーを外したところ


fig3 : 電源やHDDを外したところ

 電解コンデンサの不良を疑った私は、FLORA330DK3を分解してみることにした。

 まず、リヤパネルのビス3本を抜いてカバーを取り去る。

 内部には、電源やHDD, FDD, CD-ROMを取り付けたサブユニットが間隙なく並んでいるので、これをひとつずつ取り外していく。

 電源ユニットを除いて、工具なしでfig3まで分解できたのには恐れ入った。ビスを使わず、はめ込み式の構造にするのは、製造コスト削減の基本中の基本である。

 なお、あとで元通りにできなければ大変なので、コネクタ類を抜くときは、接続関係をスケッチするか、デジカメで撮影しておくことをお勧めする。



fig4 : マザーボード


fig5 : 液漏れを起こしたコンデンサ

 シャーシからマザーボードを取り外してよ〜く観察すると、予想通り、マイクロプロセッサ周辺の複数の電解コンデンサが、液漏れを起こしたり、膨張して安全弁が開いた状態になっていた。

 fig5に劣化した電解コンデンサの一例を示す。

 頂部がモッコリ膨れ上がり、小さな茶色いサビが浮いているのがおわかりいただけると思う。
 これは、異常に上昇した内部の圧力を逃すために安全弁が開き、中の電解液が吹き出した証拠である。

 このように劣化した電解コンデンサには、正常な機能は期待できない。電源のリップルが増加するから、マイクロプロセッサが誤動作を起こして当然である。



fig6 : 交換すべきコンデンサ
 外観から判断する限り、明らかに異常なのは、マイクロプロセッサ周辺の合計9本の電解コンデンサであった。

 いずれも6.3V 1500μFで、菱形の中に"YEC"という文字が入ったロゴがついている。
 台湾にあったYeong Long Electronic Co Ltd の製品なのだそうで、不良アルミ電解コンデンサの代表とされているらしい。

参考リンク:電解コンデンサの製造元簡易判別法(MKK)

代替部品の購入


fig7 : 日本橋


fig8 : ニチコン(株)製の低ESR電解コンデンサ

 マイクロプロセッサ周辺の電源回路に用いられるアルミ電解コンデンサは、比較的高温に耐えることができ、かつ、ESR(Equivalent Series Resistance = 等価直列抵抗)の小さい特殊仕様のものである。間違っても、ジャンク箱の底に眠っている汎用品を使ってはいけない。

 ネット上で検索したところ、共立電子で小売りされているようだったので、11月17日(2005年)、日本橋に出かけた。

 ニチコン(株)製の低ESR電解コンデンサ(UHMシリーズ) 6.3V 1500μFは、1本63円(税込み)。オーディオ用の高級電解コンデンサはいかにも高そうな外観をしているが、このコンデンサは黒のパッケージに白の印字で、見かけは他の汎用品と変わらない。

 余談であるが、最近の日本橋は、どうも元気がない。
 家電を扱う店がどんどん減り、こんどはパソコン店やジャンク屋までもが次々と店じまいしている。
 そのあとには、メイド喫茶やDVD店が入ることもあるが、『貸店舗』・『売物件』の看板を掲げたまま、長らくシャッターを閉じている店も少なくない。
 もう30年近く日本橋に通う私にとっては、淋しさもひとしおである。

不良電解コンデンサの取り外し


fig9 : コンデンサの外しかた


fig10 : 取り外したコンデンサ

 代替部品が揃ったら、いよいよ電解コンデンサの交換に着手する。

 まず、マザーボードから劣化した電解コンデンサを外す。
 ハンダゴテを手に電子工作を楽しんだ経験がある方なら、あまり難しい作業ではないと思う。

 このとき、2本のリードをいっぺんに引き抜こうとするとうまくいかない。
 fig9のように、一方のリード線のハンダを溶かし、反対側に倒すようにして引き抜く。次に残ったリードも同様にすると、簡単に外れる。ハンダ吸い取り器は必要ない。

 このとき、パターンを損傷しないようにするのが肝要だが、電解コンデンサが接続されているのは、太い電源ラインもしくはGNDなので、そのようなことにはならなかった。むしろ、ランドの熱容量が大きすぎて、なかなかハンダが溶けないほどであった。



fig11 : コンデンサを外したあと
 全部の不良電解コンデンサを取り除いたら、念のため、コンデンサの下に隠れていた部分に腐食がないか点検する。

 私のFLORA330DK3は、幸いにして基板自体には何の損傷もなかった。

 万一、基板に電解液が付着している場合は、アルコールで清拭するといいらしい。

新しい電解コンデンサの取り付け


fig12 : 新しいコンデンサを挿入したところ


fig13 : できあがり

 不良電解コンデンサを外したあとに、新しい電解コンデンサをハンダ付けする。

 ご承知かと思うが、アルミ電解コンデンサには極性がある。これを間違えると、電源を入れたとたん、コンデンサが破裂する可能性があるので、十分に注意したい。

 あらじかじめ電解コンデンサのリードを短めに切っておき、ホール(穴)をハンダゴテで十分に熱してから差し込むと、多少ハンダが残っていても簡単に挿入することができる。

 今回使ったニチコン(株)製の低ESR電解コンデンサは、くだんの不良電解コンデンサよりリード線の間隔がやや狭い。従って、若干基板から浮いた状態でハンダ付けすることになる。無理に押し込むと封止部にストレスがかかり、電解コンデンサの寿命が短くなることがある。

 基板から突き出た余分なリード線を切断し、取り付け作業は終了である。

 このとき、基板にハンダくずが付着していると、これまた故障の原因になるので、目を皿のようにしてチェックしておく。



fig14 : バックアップ電池の交換

 パソコンを分解したついでに、不揮発性メモリのバックアップ電池も交換しておくとよいだろう。

 FLORA330DK3に使われていたのは、汎用のリチウムコイン電池(CR2032)1コであった。



fig15 : 電源ユニット
 念には念を入れるべく、電源ユニットも分解してみた。

 しかし、変形した電解コンデンサは見当たらなかった。

組み立てと試運転

 電解コンデンサの交換が済んだら、分解したときと逆の手順で、パソコンを再度組み立てる。このとき、各種コネクタを1つでも接続し忘れるとあとで面倒なことになるから注意が必要である。

 作業が終了したら、ディスプレーやキーボードを取り付けて、試運転をしてみる。万一、パソコンが起動しない場合は、即刻プラグを抜かねばならない。

 マシンは無事起動し、そのあと丸1日電源を入れたままにしておいたが、フリーズは一度も起きなかった。

★  ★  ★

 アルミ電解コンデンサは、比較的短命で、かつ、信頼性の低い電子部品であることは知っていたけれど、実際にその"被害"を目のあたりにしたのは初めてであった。

 2001年頃に製造されたパソコンが、正体不明のフリーズを起こすようになったら、一度マザーボードの電解コンデンサをチェックすることをお勧めしたいと思う。

参考


fig16 : FLORA330DK1の惨状

 私の家には、じつはもう1台、FLORA330がある。

 自宅サーバ(FreeBSD)の予備機になっているFLORA330DK1だ。今のところ、何の問題もなく動作するが、念のためマザーボードを点検したら、ここにレポートしたFLORA330DK3より酷い状態になっていた。

 やはり菱形に"YEC"のロゴが入ったアルミ電解コンデンサが全部で9本(すべて6.3V 1500μF)、頂部が膨れ、サビが浮いた状態になっている。
 しかし、こちらは基板の設計自体にも問題があるように思える。fig16をご覧いただければわかると思うが、マイクロプロセッサの放熱器から吹き出た熱風が、もろにコンデンサに吹き付ける部品配置になっているのだ。

 いざというとき、予備機が稼働しなかったのでは話にならないので、即刻不良コンデンサを交換したのは言うまでもない。


 アルミ電解コンデンサについては、次の資料が参考になった。

注 意

 パソコンの修理は、自己責任で行ってください。

 電源回路の修理は、方法を誤ると、部品の破裂や火災の危険があります。ハンダコテを握った経験がない方は、専門家に修理を依頼することを強くお勧めします。

戻る


Copyright (C) 2005 Heian Software Engineering. Allrights Reserved.

制作:2005年11月16日 修正:2005年11月21日