USBやカードモデムの普及に伴って、パソコンインターフェースとしてのシリアルポートの地位は下がる一方です。けれど、そうした周辺機器でも、細かい設定をしようとすると、"DCD"とか"CTS"なんて言葉が登場します。
そこで、半ば忘れかけたRS-232-Cインターフェースについて、まとめてみました。
■コネクタ
RS-232-Cのコネクタは、古くは25pin D-subコネクタが標準的でした。
しかし、規格で決まっているのは、モデムなどの終端装置側(DCE)であって、パソコンなどの端末(DTE)側は何でもいいことになっています。PC/AT機などでは、9pin
D-subコネクタが一般的です。
■電気的特性
ディスクリートで組んでた昔は、±15Vを作るのが結かなり面倒でした。ケミコン数コをハンダづけしてやるだけで、RS-232-Cインターフェースができちゃう+5V単一電源のMAX232なんてのが出たときは、『何とすばらしいチップなんだ』と感激したものですが...。
ドライバ無負荷出力 | ≦25V |
ドライバ負荷出力 | 5〜15V |
ドライバ短絡出力電流 | ≦500mA |
ドライバパワーオフ時特性 | ≧300Ω |
レシーバ入力抵抗 | 3〜7KΩ |
レシーバヒステリシス | ±3V |
レシーバ入力最大電圧 | ±25V |
最大ケーブル長 | 15m |
最大伝送速度 | 20Kbit/sec |
動作方式 | 不平衡 |
■ピン配置
ピン番号と信号割当ては下表のとおりです。空色のアミかけをしてる信号は、PC/AT互換機の9pin D-subに出ている信号です。同期通信関係の信号がカットされています。さらに、Macintoshのシリアルポートには、赤字の信号線は存在しません。
ピン 番号 |
JIS記号 | 慣用 名称 |
信号方向 DTE - DCE |
用 途 | 種別 |
1 | - | PG | - | 保安用接地 | |
2 | SD | TxD | → | 送信データ | データ |
3 | RD | RxD | ← | 受信データ | データ |
4 | RS | RTS | → | 送信要求 | 制御 |
5 | CS | CTS | ← | 送信可 | 制御 |
6 | DR | DSR | ← | データセットレディ | 制御 |
7 | SG | GND | 信号用接地 | ||
8 | CD | DCD | ← | キャリア検出 | 制御 |
9 | (NC) | ||||
10 | (NC) | ||||
11 | (NC) | ||||
12 | BCD | ← | バックワードチャネル・キャリア検出 | ||
13 | BCS | ← | バックワードチャネル・送信可 | ||
14 | BSD | → | バックダードチャネル・送信データ | ||
15 | ST2 | TxC2 | ← | 送信信号エレメントタイミング(末端) | タイミング |
16 | BRD | ← | バックダードチャネル・受信データ | ||
17 | RT | RxC | ← | 受信信号エレメントタイミング | タイミング |
18 | (NC) | ||||
19 | BRS | → | バックワードチャネル・送信要求 | ||
20 | ER | DTR | → | データ端末レディ | 制御 |
21 | SQD | ← | データ信号品質検出 | ||
22 | CI | RI | ← | 被呼表示 | 制御 |
23 | SRS | データ信号速度選択 | |||
24 | ST1 | TxC1 | → | 送信信号エレメントタイミング(本体) | タイミング |
25 | (NC) |
PC/ATマシンの9pin D-subは下記のとおり。
ピン番号 | JIS記号 |
1 | CD |
2 | RD |
3 | SD |
4 | ER |
5 | (GND) |
6 | DR |
7 | RS |
8 | CS |
9 | CI |
■信号の意味
現在のパソコンでは、本来の意味とは違った目的で使われていることがあるので、注意が必要。■がパソコン(DTE)からモデム(DCE)に送られる信号、■がモデムからパソコンに送られる信号です。
■SD(TxD)-送信データ
送信データ。パソコン等の端末(DTE)から、モデムなどの終端装置(DCE)に送られるデータの信号線。負論理である。
■RS(RTS)-送信要求
送信要求。本来は、半二重通信方式のモデムで使われる信号線。DTE側がデータ送信に先立ってモデムを送信状態(キャリア送出)にするための信号。全二重モデムでは、常にONにしたままでよい。
しかし、一般に市販されているパソコン/モデムでは、データ送信を抑制する目的で使用される。つまり、DTE側のバッファがいっぱいになると、RTSをONにしてDCE側が送信するデータを止めさせている。
■ER(DTR)-データ端末レディ
DTEが動作可能であることをDCEに知らせる信号。ERが一定時間以上OFFだと、回線を切断してしまうモデムが存在するので注意が必要である。なお、Macintoshのシリアルポートには、ERに相当する信号線がない。一般に市販されているMac用変換コネクタでは、内部でRSとERが結線されているものもある。従って、モデムに対してER信号線を常時ONとみなすコマンド(AT&D1など)を送出しないと、ハードウエアフロー制御が働いたとたん、通信不可能になってしまうことがある。
■RD(RxD)-受信データ
受信データ。負論理である。
■CS(CTS)-送信可
送信要求を受けて、モデムが送信状態になったことをDTE側に知らせる信号。DTE側はCSがONになったことを確認してデータの送信を開始する。一般的には、前項のRS(RTS)と組み合わせて、ハードウエア的なフロー制御に使われている。古典的なシリアル通信用チップであるi8251は、CSをONにしないとハードウエア的にデータの送信ができない。
■DR(DSR)-データセットレディ
DCEが動作可能であることをDTEに知らせる信号。Macintoshのシリアルポートには、DRに相当する信号線がない。
■CD(DCD)-キャリア検出
DCEが送信可能な状態になったことをDTEに知らせる信号。一般的なパソコンでは、相手方にコネクトしたときにONになる。
■CI(RI)-被呼表示
相手からの呼び出しを受けたことをDTEに知らせる信号。一般のモデムでは、電話がかかってきたときにONになる。
参考文献
吉田功 : シリアルポートの機能と応用. トランジスタ技術 1995年10月号 p240
ここに記載した内容は、私が独自に調査したものが含まれます。結果については責任を負いかねますので、あなたの自己責任でご利用ください。 |
(C)Heian Software Engineering
2001.1.2 制作 2002.9.20 訂補